生存者バイアスというバイアスを聞いたことがあるだろうか?
生存者バイアスは日常にもあふれており、気づかないうちに様々な判断の基準になっていることがある。
目次
生存者バイアスとは
このバイアスは文字通り「生存」していることによって引き起こされるバイアスである。
一番有名な例が戦争での戦闘機の話だ。
1戦を交え、ある戦闘機が基地に帰還した。
上記した図が帰還した戦闘機の被弾痕図だ。
弾痕から良く狙われる部分がはっきりとし、より強化すべき場所がはっきりとした。
技術班は弾痕があった箇所をより強固に改良を加えた。
さて一見するとこの技術班が行ったことは正しいように見えるだろう。
しかしこれには大きく、生存者バイアスがかかっているのである。
この時に技術班が見落としている部分はどういったことだろうか?
それは「墜落した戦闘機の弾痕」である。
帰還した戦闘機の弾痕のデータがここには含まれていないのである。
元々なぜ戦闘機を強化しているのか?と考えると
撃墜されないためである。撃墜されないためにより強化しているのである。
しかしながら肝心の撃墜された原因の考察がこの強化過程には含まれていない。
つまり、帰ってきていない(生存していない)戦闘機からは情報が得られないのだ。
するとどうなるか?
帰ってきた(生存している)戦闘機からの情報だけで偏りが出ることになる。
こういった何らかの選択過程を通過した人・物・事のみを基準として判断を行い、その結果には該当しない人・物・事が見えなくなることであるバイアスを生存者バイアスという。
生存者バイアスの特徴
生存者バイアスの特徴は大きく2つある。
1つ目は「何らかの関門を通過したものに起きる」
2つ目は「広まりやすく認識しやすい事象」
1つずつ解説していく。
①何らかの関門を通過したものに起きる
生存者バイアスは全て何かしらの関門(ハードル)を乗り越えたものに生じる。
これは何かをある基準で区切るという行為が原因である。
人間は何かを判断するときに何か基準を設けることが多い。
それは物事をはっきりと認識し、区別するためであり、悪いことではない。
(ただし、基準や軸が元々不安定である場合はその限りではない。)
しかしながらある基準で分け隔てた後に一方ばかりに目を向けることから発生しているのがこのバイアスなのである。
つまり生存者バイアスは区別していく工程の中で捨てられていく対象が存在することで起きるバイアスとも言えるだろう。
②広まりやすく認識しやすい
生存者バイアスの最も大きな特徴である。
なぜなら「死人に口なし」であるように、生存してきた情報から構成されるバイアスだからである。
死人(選ばれなかった情報)は自分から発することができない。
つまり情報の選び手が目を向けようとしない限り、明らかにならないのである。
必然として広まりやすく、認識しやすいのである。
世の中はそういった生存者で構成されているものが多数ある。
起業家の本をよく見かけることがあるだろう。
成功した起業家の本はよく見かけるだろうが、失敗だけをした起業家の本を見かけたことがあるだろうか?答えはNOだ。失敗だけをしてきた起業家の本なんて、多数の人間からすれば一切の価値はなく、読みたいとも知りたいとも思えないからだ。
なぜ失敗したのか?なぜ失敗だけをし続けているのか?など物事を成功させる要因を少しでも高めるためには失敗にも目を向けるべきではないだろうか?
しかしこの世界は失敗には目もくれず、基本的に成功したものばかりで構成されている。
つまり生存者バイアスが働いているのである。
生存者バイアスの具体例5選
生存者バイアスは多くの例があるため、戦闘機の話のように一部を有名な例を紹介する。
①起業家の話
起業家の本やインタビューをよく見かけることがあるだろう。
そして彼らはいつも成功してきた話をしているだろう。
彼らの話に感銘を受け、彼らと同じように行動すれば彼らと同じような成功をあたかも得られるように聞こえるかもしれない。
しかし、起業家の話に感銘をうけることはいいのだが、失敗した起業家の話に耳を傾けたことはあるだろうか?
多くの人はないと答えるだろう。
そして聞いたことがあったとしても、成功している起業家の話と比べると圧倒的に例が少なく覚えているかもわからない、パッと出てこないことが多いはずだ。
特徴②でお伝えしたように生存者バイアスは広まりやすく認識しやすいという特徴がある。
つまり起業家の話の多くは生存者バイアスを含んでおり、生存者バイアスのもと起業家に対する理解がなされていることになる。
起業家の話を聞くときは必ずその裏には失敗して埋もれている起業家の存在も忘れず話を聞きましょう。
②就職活動の話
就職活動のとき、参考にする情報があるだろう。
それは内定を取った人間の話だ。
なぜなら内定を取るということは就職活動時における自分自身のゴールであり、内定をどうすればとれるのか知りたいかだ。
しかしここでも生存者バイアスにかかっていることに気づこう。
それは内定(生存)できなかった人間のことだ。
内定(つまり採用活動に生存)した人のみの話だと、なぜ受かったのか、という情報は手に入れることができるが、肝心の落ちてしまう要因を手に入れることができないからだ。
③ある成功した企業戦略を自社戦略として用いるとき
ある企業の戦略が成功したと聞き、その戦略を自社でも用いようとするときがあるだろう。
この時にも生存者バイアスが良く働いていることがある。
それはその戦略を用いて失敗してきた企業のことだ。
あの企業が成功しているなら自分たちの企業も成功するかもしれない。
と安易に考えてしまうことはないだろうか?
同じ業界、同じ規模、同じ経営資源
戦略を用いても成功するであろう材料ばかりに目がくらみ、その戦略を用いてしまう。
しかし、その戦略を用いて失敗した企業の存在を忘れてしまってはならない。
成功しているという関門を潜り抜けた企業だけに焦点を当ててしまっていることでバイアスにかかってしまう。
また
「同じ業界、同じ規模、同じ経営資源
戦略を用いても成功するであろう材料ばかりに目がくらみ」
この考えもまたバイアスにかかってしまっている。
詳しくは下記のリンクを参照していただきたい。
自分にとって都合のいい情報ばかりを集めてしまう。
そう、確証バイアスである。
④受験勉強
受験勉強をしていると、合格してきた人間の話ばかりに焦点があてられると思う。
「たった1年で合格できたマル秘勉強術」
ちまたにはこのような本が溢れかえっている。
しかし
「受験に失敗したからこそわかるマル秘勉強術」
このような本は一切見かけない。
どうしてだろう。
それは先ほどお伝えしたように、生存者バイアスは「広まりやすく認識しやすい」ことから生存者のみにフォーカスされることが多いからだ。
例え、上記した本があったとしても売れないだろうし価値を感じる人間は少ない。
人間は誰しも輝かしい未来を想像して生きていたいし、自分が失敗するだなんて思いたくもないからだ。
生存者バイアスはこういったところからも人間の本能に即したバイアスともいえるだろう。
⑤努力の話
努力をしなさい。
と口酸っぱく言われてきただろう。
努力をすれば成功できる、努力を続ければ報われる。
そういった文言で努力と言うものを促されてきたものだ。
努力は報われる、成功できる
この言葉の先にあるのは、努力を通じて成功してきた人間の姿である。
そう努力(生存)してきた人間のことだ。
努力を続けることが本当に成功に繋がるのか。
今一度この努力と言う話も考えなさねばならない。
いつも努力は報われるという言葉に踊らされている様では生存者バイアスにかかった状態で闇雲に努力し続け、いずれ努力をやめ(生存できずに)てしまうことに繋がるだろう。
まとめ
生存者バイアスについて理解が深まっただろうか?
生存者バイアスは人のイメージを捻じ曲げてしまい、肝心なことを忘れさせてしまうバイアスである。最初に書いたように戦争における戦闘機においては命に繋がる重大な要素となりうる場合もある。
特に確証バイアスと生存者バイアスが重なってしまう場合、より悲観的な結末を迎えてしまう可能性が高い。
バイアスにかかってしまうことは当たり前なのだが、そのバイアスを知っているか知らないかで対処できることは多くある。
次回はこの生存者バイアスの対策についてまとめる。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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